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「お茶飲み隊が行く!」
取材・文 安宅理絵子

第1回 荻窪「茶のイ」

 お茶を飲むことは好きでも、ちゃんとした日本茶専門のお店に行ったことがなかった私は、このお店に来て、完全に日本茶の魅力にとりつかれてしまった。

 荻窪駅南口から歩いて少し、日本茶茶房「茶のイ」。落ち着いた店の雰囲気はマスターと奥さんそのものだ。やわらかな店内、ほっとするお二人。とろーり。

  マスターの板谷さんが店を始めたのは1997年。お二人とも小さい頃から茶道を習っていた。なんと奥さんのおばあちゃんはお茶の先生。それでも、開業にあたっては、静岡の問屋さんの社長に教えを請いて、一から勉強し直したという。「茶のイ」で出されるお茶はその問屋さんから卸しているものだ。



  そして、茶器や道具にもこだわりをもって、お二人で歩いて集めている。とても味がある器。シンプルでいて飽きがこないようなものだ。美濃焼、萩焼などいろいろある。いいものを集めて、いいものを出す。静かだけどそのこだわりに、私はいよいよ「茶のイ」にはまり始めた。

 お二人と「お茶」についていろいろ話した。すると、マスターはこんなことを言ってくれた。「日本人は意外とお茶にこだわらない」 確かにそうかもしれない。私も、最近まで、缶入りやペットボトルのお茶、茶こしの入った急須で煎れるお茶を思い浮かべていた。

  手軽さを求める気持ちもわかるけど、もうそろそろ日本茶の魅力を味わってもいいんだ。そういうゆとりを持つことが大切。マスターの話を聞いてふと思ってしまった。

  お茶が、コーヒーなどの飲料水と同じような商品戦略に乗ってきたということは、本物の味にこだわる人びとも必ず出てくると思う。だから、お茶ブームが伝統的なお茶文化を破壊するとも思えないけど、やっぱりお茶の本来の旨みを知ることは大切なんだ。それは「ゆとり」なんだ・・

 マスターに人気メニューを聞いてみた。抹茶(夏は冷抹茶)がよく出るようだ。私はまだ飲んだことがない。煎茶の深蒸しとかほうじ茶を飲んだ。ある時は濃茶も飲んだ。これには戦慄が走った。何ともいえない味。これがお茶なのかっ、と思ったほど。ドロドロしていて、味も煎茶とは全然違う。飲むというより、泡を食べるという感じだった。刺激がかなり強いため速攻で胃腸をやられたけど、それだけ良いお茶に親しんでこなかった自分への戒めだと思って、懐深く沈めることにした。

 マスターによると、煎茶は家庭でもよく飲んでいるけど、意外とおいしく煎れるのが難しいものらしい。だから、本来のおいしさを「茶のイ」に行って味わえるのは光栄だと思った。そして、私の胃腸にパンチを与えた濃茶はやはり、「茶のイ」の注目メニューだ。

 普通、茶道を習っている人はみんな飲んでいるのかと思ったら、案外、本番以外は飲めないらしい。本番でも少ししか飲めないから、茶道を知らない人でも飲めるなんて、やっぱり試す価値あり。すごい、あのパンチ力。

 あと見逃してはならないのは、和菓子とのセットメニュー。この和菓子が、これまた美味。店舗販売をしていない、吉祥寺のとある和菓子屋さんから取り寄せているとのこと。日に4種類の和菓子があって、そこから一つ選べる。(いや、二つも三つも選ぶ人もいるらしい…意外と男性が多いんだって)日によって違う種類が届けられるから、行くたびに違うおいしさに出遭えるというのもまたいい。

 マスターは言ってくれた。日本茶のおいしさを知って、お客さんが少しずつ増えていってくれればいい、と。お茶は原価がコーヒーなんかよりずっと高いから、おいしいものをお客さんに提供しようと思うと、お店の運営は大変だそうだ。それでもお茶にこだわりたいというお二人の心が、今日も私を和ませてくれ、お客さんを微笑ませていると感じた。

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