誰もがみんなアーティスト

 どのような社会においても、特定の芸術能力に秀でた人たちは、三角のピラミッド型に分布していると考えられます。つまり、「万人を魅了できる普遍的な芸術を提供する表現者」は少人数しか居らず、一方「数人に受けるだけのマニアックな芸術の提供者」はもっと多数いるということです。このことを図にして示すと次のようになります。

  いま、このような能力分布を前提とすると、「どのラインの人たちまでがその能力を売って稼いで生きていけるか」という問題は、「どれくらいの消費者がいれば、その芸術が採算ラインを超えるか」という問題として読み替えることができます。そしてどのくらいの消費者がいれば採算に乗るかということは、「消費者を集めるのにどれだけの苦労がいるか」という情報技術のレベルに依存すると考えることができそうです。

  たとえば、チラシをまくことしかできない古い情報技術の下では、マニアックな消費者を探し出すのには非常にコストがかかります。こういう時は、金をかけ死ぬほどチラシを配っても十分採算にのる一部の創作者だけが、プロとしてやっていけるマス・エンターテイナーになります。ピラミッドで言えば頂点あたりの少数者だけがエンターテイナーとして自己実現できるということになります。

  ところが、そこで、なんらかの情報技術の革新=IT革命があり、消費者を探し出してくるコストが劇的に下がったとしたらどうでしょう。芸術家になる採算ラインも劇的に下がることになるはずです。すると今までの情報技術(チラシ配布)を前提にしたら、プロになれなかった人たちが、プロになれるようになるわけです。また、プロにはなれなくても、個々人の持てる芸術的才能を小遣い稼ぎ程度には資金化できることになるわけです。消費者たちにとっては、より多様で、よりパーソナルな芸術が容易に手に入るようになるわけです。

  このように考えますと、俗に「IT革命」などと呼ばれる情報技術の進展からみれば、今まで以上にパーソナルな芸術を世に輩出してゆくことが可能になるのは、疑いようのないことであると考えられます。